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離婚の件数は、ここ数年減少傾向にあります。それと因果関係があると考えられているのが、「離婚時の年金 分割制度」です。 「19年4月以降の離婚ならば、夫の年金の半分がもらえるようになる」などとよく言われるのですが、実は勘違 いをしている方が多いのです。 離婚時の年金分割制度とは? 厚生年金や共済年金は、加入者本人のものであって、それを譲ったり差し押さえたりすることはできません。 仮に熟年離婚となっても、厚生年金から支給される老齢年金は全額夫のものです。従って離婚した妻は国民年 金のわずかな老齢基礎年金しかもらえないのです。 そこで、平成16年の年金改正で年金の分割ができるように決まったのです。(施行は、19年の4月1日から) これは当事者間で、分割すること及び分割割合について合意ができているか、もし合意がまとまらなくても裁判 所の決定があれば、婚姻期間に対応する厚生年金の最大5割までを分割できるというものです。 今でも、離婚の際の夫婦の話し合いで年金を分け合うことに合意すれば、妻は夫から年金をもらうことはできま すが、これはあくまでも夫が受取った年金の中から、その一部を妻の口座に振り込むという形です。ですので 振込みが滞ったり、夫が死亡すると年金はもらえなくなってしまいます。 ですが、今回の年金分割制度は、「保険料の納付記録の分割」です。つまり年金をもらう権利自体を分割するの です。ですから、もし夫が死んでも、妻は自分の年金としてその後も受取ることができるのです。 この年金分割制度は、次の2段階で実施されます。 1.平成19年4月以降から実施された内容 *平成19年4月1日以降に離婚した場合 *分割対象は、婚姻期間に納めた保険料に対応する厚生年金部分(報酬比例部分) *分割割合は、当事者の合意か裁判手続きで決める ・専業主婦の取り分は、夫の厚生年金部分の2分の1まで ・共働きの場合は、双方の厚生年金部分を足した額の2分の1まで *分割の請求は、合意内容を記載した公正証書か裁判所の証明書類を社会保険事務所に提出する ・分割請求は、離婚成立後2年以内にすること 以上のように、離婚すれば自動的に2分割されるわけではないので、注意して下さい。 2.平成20年4月1日以降の内容 *平成20年4月1日以降に離婚した場合 *会社員に扶養され専業主婦として第三号被保険者だった期間に限り、自動的に半分に分割 ・ただし、自動分割されるのは、平成20年4月1日以降の婚姻期間に対応する分だけなので、それ以前の 分については、上記1の手続きをしないと分割されないので、注意して下さい。 *離婚以外の場合でも分割が認められる場合があります。 ・例えば、配偶者の所在が長期にわたり不明な場合などです。 以上のように、いずれにしても平成20年4月1日以前の婚姻期間に関しては、当事者の合意又は裁判所の 決定で分割割合を決めなければならないということになります。 離婚時の年金分割の例(平成19年4月1日以降) ・夫 会社員歴 40年(平均月給36万円、賞与3.6ヶ月) ・妻 専業主婦 ・婚姻期間 30年 ・分割割合 2分の1 とした場合の年金受給額は 分割前は ・夫 基礎年金 約6.6万円 厚生年金 約10.1万円 合計 約16.7万円 ・妻 基礎年金 約6.6万円 合計 約 6.6万円 となるが、これが分割されると ・夫 基礎年金 約6.6万円 厚生年金 約6.3万円(−3.8万円) 合計 約12.9万円 ・妻 基礎年金 約6.6万円 分割分の年金 約3.8万円 合計 約10.4万円 となります。 つまり、夫の厚生年金10.1万円のうち、婚姻期間に対応する部分7.6万円が半分に分割されるということ になるわけです。 離婚時受給額の情報提供について 離婚を考えているが、自分の年金はどれくらいもらえるのか? 社会保険庁は平成18年10月2日より、離婚前でも分割後の年金受給額の目安となる情報を提供する サービスを開始しました。 年金手帳と戸籍謄本か抄本を社会保険事務所に提出すれば、 ・分割の対象となる期間 ・対象期間における離婚する当事者それぞれの標準報酬総額 などについて教えてもらえます。 また、50歳以上の希望者には、年金の試算額も教えてもらえます。 @2分の1分割 A希望する分割割合 B分割しない の3通りの試算額が分かります。 なお、離婚前には請求者だけに回答しますが、19年4月以降に離婚が成立した場合には、一方からの請求で あっても双方に通知がなされます。 厚生労働省の話では、「思ったほどの年金額にならない方が多いはず。離婚を決断する前に冷静に判断して もらうための材料」としていますので、事前に確認しておいたほうがよいでしょう。 年金分割(分割改定)の請求手続き 離婚して、年金の分割を社会保険事務所に請求する場合には、 1.請求書を記入 ・それぞれの氏名、生年月日、住所、基礎年金番号 ・婚姻期間 など 2.確認資料として @当事者の年金手帳又は国民年金手帳 A婚姻期間を明らかにできる書類(戸籍謄本など) 3.按分割合を定めた書類として 公正証書又は裁判所の証明書類 なお、公正証書には按分割合のみならず、分割改定の請求についての当事者間の合意が記載されている ことが必要です。 以上のような内容ですので、離婚を決断する前に十分理解しておくことが大事ですし、今後は離婚協議の際にも 財産分与、慰謝料、養育費などと同様に、年金分割についても話合っておくことが重要となります。 そして、年金分割の合意ができたら、必ずそのことも含めて「公正証書」を作成することが必要でしょう。 離婚時の年金分割制度のQ&Aは ⇒ こちら 一人で悩まず、まずはご相談ください。 「メール相談」は ⇒⇒ こちらから 離婚協議書の作成依頼・料金は ⇒⇒ こちらから |