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<運行供用者>関係 <損害額の算定>関係 <運行供用者>関係 1.最判昭48.12.20 ア タクシー会社の駐車場からその所有の自動車を窃取した者が事故を起こした場合において、同社が上記の自動車のドアに鍵をかけず、エンジンキーを差し込んだまま、これを自己の駐車場の道路に近い入口付近に長時間駐車させていた事情があっても、窃取した者が、同社と雇用関係等の人的関係を有せず、タクシー営業をしたうえで乗り捨てようとの意図のもとに上記自動車を窃取したものであり、窃取後約2時間タクシー営業をしたのちに事故を起こした等の事実関係があるときは、上記タクシー会社は自動車損害賠償保障法第3条による運行供用者としての責任を負わない。 イ 自動車の所有者がドアに鍵をかけず、エンジンキーを指し込んだまま、駐車場に自動車を駐車させても、上記右駐車場が客観的に第三者の自由な立入りを禁止する構造、管理状況にあると認めうるときには、この駐車と上記自動車を窃取した者が惹起した交通事故による損害との間には、相当因果関係があると認めることはできない。 2.大阪地判昭61.3.27 駐車場と呼ばれるにふさわしい工作がなされた跡がなく、四囲を囲む設備などの工作物が何一つない駐車場にエンジンキーを差し込んだままドアに施錠せずに駐車させていた車が窃取され事故を起こした場合に、加害車の保有者に管理上の過失を認め、運行供用者責任を認めた事例 3.最判平5.3.16 友人の父が経営している板金工場内だけで使用中のフォークリフトを無断運転中に生じた事故につき、その友人の父親の運行供用者責任を認めた事例 4.最判昭49.11.12 元被用者が会社を退職した翌日、エンジンキーを差し込んだまま、しかもドアに施錠することなく駐車してあった会社の車を無断運転して起こした事故につき、会社に運行供用者責任を認めた事例 5.最判昭46.1.26 自動車所有者と姻族関係にあり、かつ、近所に居住する者が、所有者の家人に自動車を借りる旨は告げたが、所有者の承諾を得ずに自動車を持ち出した上、所有者の息子を同乗させて私用のため運転中に起こした事故につき、所有者に運行供用者責任を認めた事例 6.最判昭49.12.6 会社の従業員が会社所有の自動車を私用のため無断運転中惹起した事故により同乗者を死亡させた場合において、同乗者が会社によってその自動車を私用に使うことが禁止されていることを知りながら、無断持ち出しをいったん思い止まった従業員をそそのかして同人ともども夜桜見物に出かけるため上記の自動車に同乗したものである等判示の事実関係のもとにおいては、上記の事故により同乗者及びその相続人に生じた損害につき、同相続人は会社に対し自動車損害賠償保障法第3条に基づく運行供用者責任を問うことができない。 7.最判平1.6.6 建築工事請負会社が従業員に業務使用を認めていた事例で、会社の運行供用者責任を認めた。 8.大阪地判昭49.3..28 マイカーによる帰宅途中の事故につき、そのマイカーが業務にも使用され、会社からガレージや給油チケットの給付も受け取っていたとして、会社に運行供用者責任を認めた。 9.最判昭44.1.31 屑鉄回収販売業者の運送部門を担当する者に対し、屑鉄回収販売業者が車の登録名義、保険加入名義、車体表示の使用を許した場合、屑鉄回収販売業者に運行供用者責任を認めた事例。 10.最判昭44.9.18 甲の買い受けた自動車をその被用者が運転中に事故を起こした場合において、甲が自動車運送事業の免許を受けないで、自動車の使用者名義を乙とし、車体に乙の商号を表示した当該自動車を使用して、専属的に乙のための貨物運送にあたっていたもので、上記の事故もその業務に従事中におけるものであり、また、上記の自動車の割賦代金やガソリン代等は乙が支払って甲に対する運賃から差し引いていた等、判示のような事実関係があるときは、乙は自動車損害賠償保障法第3条による運行供用者責任としての責任を負う。 11.最判昭45.2.27 運送契約上の注文主にすぎない者が、運送業者所有の加害車の車体に注文主の社名の表示を許した場合に、注文主の運行供用者責任を認めなかった事例。 12.名古屋地判昭54.1.31 車庫証明の関係で登録名義を残した場合につき、名義人に運行供用者責任を認めなかった事例。 13.東京地判昭62.5.22 名義貸与者が車の利用をすることがほとんどなかったことを認定し、運行支配がないとして、運行供用者責任を認めなかった事例。 14.最判昭50.11.28 父と同居して家業に従事する満20歳の子が所有し父の居宅の庭に保管されている自動車につき、所有者名義人となった父は、上記自動車の運行について自動車損害賠償保障法第3条にいう自己のために自動車を運行の用に供する者にあたると解すべきである。 15.最判昭46.11.9 自動車の有料貸渡業者が、自動車貸渡契約を締結するに際し、自動車の利用申込者につき、運転免許その他一定の利用資格の有無を審査し、上記の契約上、使用時間は短期で、料金も相当高額にのぼるほか、借主が予定利用時間、走行区域、制限走行距離の遵守等の義務を負うなど判示の事実関係があるときは、貸渡業者は、借主の運行による事故につき、自動車損害賠償保障法第3条による運行供用者としての責任を免れない。 16.最判昭50.5.29 レンタカー業者は、資格審査、用途制限等につき、運行支配が存するとして、その業者に運行供用者責任を認めた事例。 17.神戸地判平3.11.27 レンタカー契約の返還時期を20日経過後に起きた事故につき、貸主の借受人に対する立場は継続しており、時間の経過だけでレンタカー業者が運行支配・運行利益を失ったものとは認められないとして、レンタカー業者に運行供用者責任を認めた事例。 18.最判平9.10.31 自動車の使用権者甲が酒に酔って自ら運転することによる事故発生の危険を回避するため運転代行業者乙に運転の代行を依頼し、乙が運転代行業務を引き受けることにより甲に対して上記の自動車を安全に運行する義務を負ったなどの事情のあるときは、甲の運行支配は乙のそれに比べて間接的、補助的なものにとどまるとして、甲は乙に対する関係において自賠法第3条の他人にあたる。 19.大阪高判平1.9.13 下請業者がトラック1台の持込みで運送業務を行う零細業者で、その実態は雇用労働者と変わらないこと、注文者に一定期間専属的継続的に支配され運送業務に従事していて経済的にこれに依存していたこと、事故の際も下請業務の執行が具体的に指示されていたとみなされることを理由に、元請業者に運行供用者責任を認めた。 20.さいたま地判平16.8.6 自転車に乗って走行中の小学生が違法な駐車車両を避けるため中央線付近まで進出し、対向車両と衝突して死亡した事件で駐車車両の責任を認めた事例 21.神戸地判平16.3.17 駐車禁止の場所に、夜間、尾灯も駐車灯も点灯せず駐車していた車両に原付自転車が衝突した事案で、被害者に70%の過失相殺をした事例 <損害額の算定>関係 22.東京地判昭51.3.25 高額診療費の請求について、損害の公平の分担の見地から、健康保険基準の2倍(初診料・再診料については、医師会標準料金表による)を限度に、事故と相当因果関係にある損害であるとしてこれを認めた事例 23.福岡高判平8.10.23 頚椎捻挫等の被害者が医療機関に対し診療単価が1点25円とする同意書を提出していた場合に、事故日から4か月以上経過した治療には緊急性等がないとして、1点20円が信義則上相当とした事例 24.最判平8.10.29 被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、被害者の身体的特徴を損害賠償の額を定めるに当たり斟酌することはできないとした。 25.最判平8.10.29 被害者に対する加害行為と加害行為前から存在した被害者の疾患とが共に原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は損害賠償の額を定めるに当たり、民法第722条2項の規定を類推適用して、被害者の疾患を斟酌できるとした。 26.東京地判平10.3.19 いわゆる植物状態になった被害者(症状固定時21歳・男)につき、母親が介護していた544日間は1日6,000円、以後は職業付添人の介護を受けるものとし平均余命の54年間は1日1万円の付添介護費用を認めた。 27.横浜地判平15.7.31 高次脳機能障害(5級)の被害者につき、将来にわたって随時介護の必要があるとの診断に基づき入院を含む症状固定までの885日間は日額6,000円、症状固定後は余命分日額3,000円の付添介護料を認めた事例 28.最判昭50.7.8 妻の家事労働は財産上の利益を生ずるものであって、これを金銭的に評価することは可能であり、負傷のため家事労働に従事することができなかった期間は財産上の損害を被ったものというべきである。 29.名古屋地判平11.4.28 主婦兼パートタイマー(53歳)の休業損害について、賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計・50歳ないし54歳の女子労働者の平均賃金を基礎として算定した事例 30.最判昭42.11.10 交通事故により左大腿複雑骨折の障害を受け、労働能力が減少しても、被害者が、その後従来どおり会社に勤務して作業に従事し、労働能力の減少によって各別の収入減を生じていないときは、被害者は労働能力減少による損害賠償の請求をすることができない。 31.最判昭56.12.22 交通事故による後遺症のために身体的機能の一部を喪失した場合においても、後遺症の程度が比較的軽微であって、しかも被害者が従事する職業の性質からみて現在又は将来における収入の減少も認められないときは、特段の事情のない限り、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害は認められない。 32.神戸地判平3.12.20 歯科医院勤務予定者(1級)につき、減収のないのは被害者の特別な努力によるものとして67歳まで100%労働能力喪失を認めた事例 33.名古屋地判平11.5.14 給料の維持・増加は本人の不断の努力及び経営者の温情によるところが多いとして、左大腿切断の被害者に労働能力喪失率に従って67歳まで92%の逸失利益を認めた事例 34.静岡地判平3.7.16 警察官(男)の後遺障害(脾臓喪失、下肢短縮併合7級該当)につき、事故後も一層の勉強と努力を重ねて警部補に昇任したこととベースアップなどにより、現実に収入の減少はないが、下肢短縮等の後遺症のため、刑事交通畑の仕事に戻れず留置係に配置換えとなっていること、今後の警察官としての勤務、昇進、昇給等に少なからぬ影響を生じることが推認されることなどの事情を総合し、症状の固定した35歳から67歳までの32年間25%の労働能力喪失を認め、ライプニッツ方式により中間利息を控除した事例 35.横浜地判平3.3.19 男子(68歳)の後遺障害(左大腿部切断等障害等級併合2級)につき、症状固定時の70歳から6年間(平均余命の約2分の1)、100%の労働能力喪失を認め、ライプニッツ方式により中間利息を控除した事例 36.最判昭54.6.26 ホフマン方式を使用した原判決を支持した事例 37.最判昭53.10.20 ライプニッツ式計算法は、交通事故の被害者の将来得べかりし利益を事故当時の現在価額に換算するための中間利息控除の方法として不合理なものとはいえない。 38.東京地判平11.5.25 嗅覚障害(12級相当)及び顔面醜状(14級)の後遺障害(併合12級)を残す障害者(男)につき、逸失利益が認められないことを考慮し、後遺障害慰謝料600万円を認めた事例 39.最判平17.6.14 損害賠償額の算定に当たり、被害者の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は、民事法定利率によらなければならないとした事例 40.東京地判平2.7.12 被害者自身において、事故発生の危険が増大するような状況を現出させたり、事故発生の危険が極めて高いような客観的事情が存在することを知りながらあえて同乗した場合など、同乗者に事故の発生につき非難すべき事情が存在する場合は格別、本件のように深夜のドライブとはいえ休憩もとり、4人で交替して運転していくような場合にまで好意同乗減額して損害賠償額を減額することはできないとするのが相当である。 41.最判昭39.9.25 生命保険金は、不法行為による死亡に基づく損害賠償額から控除すべきではない。 42.最判昭45.7.24 不法行為の被害者が負傷のため営業上得べかりし利益を喪失したことによって被った損害額を算定するにあたっては、営業利益に対して課せられるべき所得税その他の租税額を控除すべきではない。 43.京都地判昭55.11.13 昭和51年度の確定申告額560万円の土木工事請負業者(男・38歳)の逸失利益の算定につき、平均給与額を大幅に超えて高額の所得を得ているものについては、公平の立場から所得税相当分48万余円を控除して算定の基礎にするのが相当であるとした事例 44.最判昭53.10.20 交通事故により死亡した幼児の財産上の損害賠償額の算定については、幼児の損害賠償債権を相続した者が一方で幼児の養育費の支出を必要としなくなった場合においても、将来得べかりし収入額から養育費を控除すべきではない(補足意見及び反対意見がある。)。 45.最判昭52.5.27 厚生年金法又は労働者災害補償保険法(昭和48年法律第85号による改正前のもの)に基づき政府が将来にわたり継続して保険金を給付することが確定していても、いまだ現実の給付がない以上、将来の給付額を受給権者の第三者に対する損害賠償債権額から控除することを要しない。 46.最大判平5.3.24 地方公務員共済組合法の規定する退職年金を受給していた者が交通事故により死亡した場合に、生存していればその平均余命期間内に受給することができた退職年金の現在額などを同人の損害として、その賠償を求めた事案について、本件交通事故と同一の原因によって被害者又はその相続人が遺族年金の受給権を取得したということだけから損益相殺的な調整をすることは原則として許されない。被害者又はその相続人が取得した債権につき、損益相殺的な調整を図ることが許されるのは、当該受給権が現実に履行された場合又はこれと同視し得る程度にその存続及び履行が確実であるということができる場合に限られる。 47.最判昭50.10.24 国家公務員等退職手当法による退職手当、国家公務員共済組合法による遺族年金及び国家公務員災害補償法による遺族補償金の各受給権者は、妻と子が遺族であるときは妻と定められているから、退職手当金の受給額は妻の損害賠償債権額からだけ控除すべきであり、子の損害賠償債権額から控除すべきでない。 48.最判昭58.4.19 労災保険等の休業補償、傷害補償は財産上の損害の補てんのためにのみなされるものであり、給付された補償金が財産上の損害額を上回る場合であっても、その差額を慰謝料から控除することはできない。 49.最判昭62.7.10 労災保険法による休業補償及び傷病補償年金並びに厚生年金法による障害年金によって補填される損害は、財産的損害のうちの消極損害(逸失利益)のみであって、これらの給付額を財産的損害のうちの積極損害及び精神的損害(慰謝料)との関係で控除することは許されない。 50.最判平8.2.23 労災保険の特別支給金は損害額から控除することはできない。 51.札幌地判平11.1.28 事故歴があることにより評価損が発生するとして、車両本体に対しては1割、修理費用に対しては3割を目安として、55万円の評価損を認めた事例 52.東京地判平10.12.9 国産車のバンパー凹損、後部から後側部にかけての歪み、マフラーの損傷があった場合に修理費の2割相当の評価損を認めた事例 ※以上の他にも数多くの裁判例が出ています。 |