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<過失相殺とは> 過失相殺とは、賠償額を決定する際に被害者にも事故の発生原因となる過失があったときに、被害者の過失も考慮するというものです。 例えば、歩行者が赤信号を無視して突然道路に飛び出したところに青信号で進行してきた車にぶつけられケガをした、というような場合です。この場合加害者側に全ての責任を負わせることは不公平であり、被害者側の過失も考慮して損害賠償額を算定しようというものです。 過失相殺が行われるとそれによる減額は、原則としてその事故での全損害を対象とし、車同士の事故の場合には双方の損害額を過失割合に応じてそれぞれが負担することになります。 <過失相殺の要件> 過失相殺をするには、被害者に過失があったことが前提です。 過失とは、一般的に「自分の行為から一定の結果が生じることが認識できたのに、不注意でそれを認識しないこと」とされています。 そして過失相殺における被害者の過失は「事理弁識能力」があればいいとされています。「事理弁識能力」とは 「物事に対しての良し悪しを判断する知能」とされています。 被害者の過失を認定するためには、事故直後に作成された事故現場の見取図、実況見分調書等の記録が重要となります。 また、当事者としても独自に証拠を収集しておくことが大事です。 例えば、事故現場の写真、図面ですが、記録するポイントしては、衝突地点、衝突の箇所や程度、被害者の転倒地点、関係車両の停車位置、スリップ痕、血痕等の位置・形状、破片等の散乱状況、事故発生時刻、天候、道路幅や路面状況、交通量などです。 また、目撃者がいる場合にはその人の証言、相手の主張なども記録しておくといいです。 <過失割合> 過失割合については、個々の事故状況によって違ってきますが、基本的な割合は基準が設定されています。 そして個々の状況に応じてそこから加算、減算が行われて最終的な過失割合が決められることになります。 基本的な基準については、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(別冊判例タイムズNo16)が参考とされます。 |
単なる好意同乗(無償同乗)のみを理由としては、減額しないというのが原則となってきています。 しかし、危険な運転状態を容認又は危険な運転を助長、誘発した等の場合には、加害者の過失の程度等を考慮の上、一定程度の減額を行うか、慰謝料額を減額するということもあります。 つまり、帰責事由のない単なる便乗・同乗については減額しない。事故発生の危険性が高いような客観的事情 (無免許・飲酒等)があることを知りながらあえて同乗した場合、同乗者自身が事故発生の危険性が増大するような状況を作り出した場合(スピード違反をあおる等)などには、減額される場合があるということです。 |
<素因減額とは> 素因減額とは、被害者に何らかの負の素因があるときに、損害額を減額するというものです。 一般的には、@心因的要因による減額 A既往症による減額 B被害者が自殺した場合 などがあります。 @心因的要因による減額 交通事故による損害がその加害行為のみによって通常発生する程度、範囲を超えるものであって、かつ、 その損害拡大について被害者の心因的要因が寄与しているときになされるものです。 A既往症による減額 最高裁判例(平成4.6.25)において認められているものです。 「被害者に対する加害行為と被害者の罹患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合におい て、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判 所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、被害者の当該 疾患を斟酌することができるものと解するのが相当である」としています。 B被害者が自殺した場合 事故と自殺との間の因果関係を認め、被害が拡大したとすると、そこに介在した自由意思の介在をどう評価 するか、減額するかが問題となります。 最高裁判例(平成5.9.9)では、事故と自殺との因果関係を認めたものの、被害者の心因的要因も寄与してい るとして、損害について80%の減額をしました。 |